「ウィズ」へなし崩し的
果たして目下の問題は公衆衛生の範疇(はんちゅう)なのか、臨床の医療なのか。
新型コロナウイルスの流行「第7波」で本県の新規感染者は連日1千人超、病院や自宅などで療養中や療養場所の決定を待つ人の数は8月25日に2万人を超えた。
そんな日に感染症法施行規則が改正され、感染者の「全数把握」の見直しが決まった。
一部の県が先行し、今月26日から全国一律で行うという。
全数把握は、全ての医師が、診断した全ての患者について、保健所へ発生届を提出し、報告する。
その提出対象を▽65歳以上▽入院を要する者▽重症化リスクがあり、新型コロナ治療薬の投与か、新たに酸素投与が必要な者▽妊婦──に限定可能とした。
見直しの理由に挙げられた、保健所や医療機関の過重な負担を減らす必要性は、重々、分かる。
ただ、そもそもの感染拡大防止の目的や、この新興感染症から地域社会の健康をどう守るのか、という視点はかすむ。
「ウィズ・コロナ」という格好よさげな看板の下、なし崩し的に「ありふれた病気」にされるのではと危惧する。
能代保健所管内の8月の新規感染者のうち60歳以上は25%。
この割合が変わらないとすれば、保健所すら誰なのかを知らない「管理」されない感染者が相当数発生すると推測される。
その時、陽性者はどういう行動に出るだろう。
行動制限のない夏から秋になり、感染者数は減少傾向にあるが、不調の際は、医療機関を受診し、必要な検査を受けてみだりに外出せずしっかり治す。
困った時はお互いさま。
1人ひとりの行動で感染拡大リスクを下げる。
そういう地域でありたい。
(渡)