クマ対策、今しっかり
数年前、秋田自動車道・三種町天瀬川付近を秋田市方向へと走行していると、100㍍ほど先を「黒い個体」が横切っていくのが見えた。
生まれて初めての〝目撃〟に驚いたが、今なら同時に恐怖感も覚えるだろう。
県内では今年、クマの人身被害が後を絶たない。
県によると、4月から今月7日までにクマに襲われるなどして負傷した人は65人。
昨年度は年間で6人で、いかに異常事態かが分かる。
輪をかけて異常なのが、65人のうち56人が山ではなく「里」で被害に遭っていること。
背景には、クマの餌となる木の実の大凶作などがあり、冬眠前に腹を満たす必要があるクマが、食料を求めて人の生活圏内をうろうろしているのだ。
まさにいつ誰がどこで被害に遭ってもおかしくない状況だ。
県民が今すべきは、行政の呼び掛けに沿ってクマに出合わない対策、出合ってしまったらどうするかの対応を各自徹底することに尽きる。
まずはクマが冬眠するまでの間を、何とか乗り切るしかない。
そこを切り抜けたら個々ではなく、社会全体で、クマを人の生活圏に入り込ませない対策に取り組む。
行政は必要な予算を付け、人的資源も対策に振り向けていく必要がある。
クマの生態に詳しい県立大生物資源科学部の星崎和彦教授は「次の大凶作の時には、秋田は人口も社会もさらに縮小している。今対策に動かなければ、一生できない」と語る。
クマはもはや「迷惑動物」ではなく、人里に現れたらそれは「害獣」だ。
県民みんなで立ち向かうためにも、その認識を共有するところから始めたい。
(平)