「白神」との向き合い方
白神山地は、ブナが優占種の原生的な森が日本海側の多雪地域に広がり、豊かな生態系の姿を残しているのが世界的な価値として評価される。
11日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産登録から節目の30年を迎えた。
白神山地の麓にある能代山本。
地元の人たちは世界遺産登録以前から白神山地とどのように付き合い、どんな時間を過ごしてきたのか、そして今後行動すべきことなどを整理しようと、白神山地を長年歩いてきた関係者から話を聞き、遺産登録30周年を前にした先月下旬に紙面に掲載した。
世界遺産登録時の価値を損なわずに地域振興に役立つように適正に管理されていること──。
モニタリング計画では、そのような点も目標の一つとして定められている。
しかし、関係者が振り返ると、観光振興が思うように図られなかったことや、遺産地域のうち人の入り込みが制限されていない緩衝地域の活用や整備が不十分だったことなどを理由に、利用の面でこの30年間を善しとしない声もあった。
「地元住民の白神山地への関心が低くなってしまった」と危惧する声が聞かれたのも事実だ。
秋田、青森両県で対応が異なる核心地域の入山の在り方に対する考え、思いを聞くと、原則入山禁止となっている本県側について、自然環境に人為的な影響を与えたくないとして現状維持を望む意見がある一方で、白神の森の価値を認識し伝えるためには実際に歩いて見て保全していく必要性を説く意見もあった。
人それぞれにある考え、思いをどのように白神山地の保全や利活用に生かしていくか。
そのための議論、道筋を示していくことが求められていると感じる。
地元の森が世界の宝と認められて30年。
世界遺産と寄り添って歩む地域は限られている。
白神の森との向き合い方は、地域の本質を問う。
(宮腰 友治)