地域のチカラ 元気吹き込む⑫

こんな働き方もある
古着屋「GARAGE DIGRU」 田中 優花さん(32) 能代市出戸本町

田中 優花さん
田中 優花さん

 「やりたいことは、東京でしかできない」。そう考えていた少女が、東京で経験を積んで古里に戻り、店を開いた。JR能代駅前で古着屋「GARAGE DIGRU(ガレージディグル)」を経営する。「能代でもやりたいことはできる」と、前向きに店を営む。
 能代北高を卒業後に上京。アパレル関係の企業に勤め、店頭での商品販売や店舗のレイアウト、バイヤー業務などを経験した。高校時代から「自分の店を持ちたい」と思い、憧れを胸に進んだ道とあって「仕事は楽しかった」と言う。
 平成30年に長男を出産し、“進路”を考えた。「店を持つなら、店がありふれている向こう(東京)よりも地元の方が面白そう」と思ったほか、夫が秋田を気に入ってくれたこと、親族が地元にいる安心感もあり、令和3年に家族3人で能代にUターンした。
 「地元の状況を知りたい」と、中心市街地活性化担当の地域おこし協力隊となり、昨年2月まで3年間活動。マルシェの開催やイベントへの協力、空き店舗の調査を担う中で、街なかを盛り上げようと努力するマルヒコビルヂングや商店会関係の活動に触れた。
 「頑張っている人たちの一員として、面白いことをしたい。能代駅前がにぎやかに、楽しくなったらいい」。そんな思いを込め、「GARAGE DIGRU」を昨年7月29日に開業。空き店舗を活用した。
 流行を踏まえて商品を仕入れ、店には700~800点ほどの衣類、雑貨が並ぶ。スウェット類が3、4千円程度、シャツ類は4、5千円程度で、「高校生や若い人も古着を楽しめるように」と、年代が比較的新しく、手を出しやすい価格の商品をそろえる。
 「冬にふぶくと客足が遠のくなど大変なこともあるが、経営は何とかなっている」という。店に立ち寄る高校生から元気をもらい、「『給食のおばちゃん』みたいに話している。服や流行の話を教えてくれて、触れ合いが楽しい」と笑顔。また、SNSを見て市外、県外から訪れる客の存在も励みで、「能代に遊びに来るきっかけに店がなれるよう、発信に力を入れたい」と意欲を見せる。
 服が好きで、カリスマショップ店員に憧れた高校時代。友人からは「一番帰って来ないだろう」と思われていた。今も「能代のために」との強い思いがあるわけではないと自然体で語りながらも、「地域に面白さをつくり、『帰って来たかいがあった』と思いたい」と話す。
 古里への思いは、「出て行きたい」から「能代でもやりたいことはやれる」に変わった。「『東京じゃないと夢はかなわない』と思うだけじゃなくて、『こんな働き方もある』と若い人に伝えたい。若い人の後押しになれたらいいな」。若者へのメッセージを胸に抱きながら、歩みを続ける。

(山谷 俊平)

関連記事一覧

error: Content is protected !!