地域のチカラ 元気吹き込む⑪

建設業のやりがい発信
能代山本アテナ 村岡陽子さん(57) 能代市中川原

村岡陽子さん
村岡陽子さん

 能代市の鈴木土建に入社して25年以上。公共施設や橋の建設、道路補修などの現場で経験を積み、数多くの工事で施工管理を取り仕切る責任者を務めてきた。能代山本建設業協会の女性部会「能代山本アテナ」では平成30年の設立時から会長。現場の第一線に立ちながら、建設業界の「やりがい」発信にも力を入れている。
 20代の頃は、市内の眼科医院スタッフとして働いていた。建設業界に飛び込むきっかけとなったのは、その頃に見たテレビ番組。大型トラック運転手や左官職人、重機オペレーターとして活躍する女性らのドキュメンタリーだった。
 女性たちの充実感がにじむ表情に「自分も同じように生きてみたい」と思ったという。技術専門校で半年間、建設機械の運転や溶接などの技術を学んで資格を取得。31歳で鈴木土建に入社した。
 初めて従事した工事は、秋田自動車道の橋台設置工事だった。当時、建設工事の現場で働く女性は今ほど多くなかった。周囲に認められたい思いが強く、業務開始前の掃除といった環境整備などに率先して取り組んだ。重さが25㌔以上ある部材二つを両肩に担ぎ、数㍍の高さがある足場を登ることもあった。「男女の区別なく、仕事をさせてくれた。先輩や同僚に恵まれた」と振り返る。
 道路工事、下水道菅工事など現場は多岐にわたる。新しい仕事に挑むたび、書店に通って関係する書籍を購入し、工法などの知識を吸収した。「入社して10年くらいは毎日が新鮮だった。大変だと思うこともあったけど、それ以上に経験や知識が蓄積していくのがうれしかった」と話す。東雲中のグラウンド整備工事で初めて現場代理人を任されて以降、数多くの工事で施工管理を取り仕切る責任者を務めている。
 現場の第一線に立ちながら、地元建設業界で働く女性のネットワーク構築や働きやすい環境づくりにも力を注ぐ。能代山本アテナは現在、会員企業社員と県、市の技術系職員合わせて10人が所属。目指すのは「男女の区別なく、それぞれのスキルと知識を尊重し合いながら仕事ができる環境づくり」だ。事務局担当者は「現場を知っているだけでなく、明るく元気な人柄で引っ張ってくれる」と信頼を寄せる。
 人手不足が深刻化する中、児童生徒や保護者向けの体験会にも力を入れている。重機の操作体験などの機会を提供し、講話では建設業で働くことの喜びややりがいを語る。道路や公共施設といったインフラの整備・維持、災害復旧、冬季の除雪など、仕事の多様さ、大切さを伝え、業界が若い世代により身近なものになってほしいと願う。「建設業は地域の生活を支えている」という誇りを胸に、今年も積極的な活動を誓う。

(川尻 昭吾)

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