地域のチカラ 元気吹き込む ⑨

気軽に親しめるように
能代手話サークル「はまなす」 見上 翔太さん(36)能代市彩霞長根

見上 翔太さん
見上 翔太さん

 合唱や日本舞踊、ミュージカルなど芸術文化の幅広い分野で活躍する。携わっている活動の中で最も長く取り組んでいるのが「手話」だ。同市の「能代手話サークル『はまなす』」の一員として、同サークル主催の手話教室で講師を務めるほか、東北地区手話サークル連絡協議会(東北地区手連)や県手話サークル連絡協議会(県手連)の会長としても手話の普及に力を入れる。「より多くの人が気軽に『手話』に触れる機会を作りたい」と意気込む。
 県立大卒業後、神奈川県内でシステムエンジニアとして勤務したが、早朝から深夜までの激務が連日続いたことで体調を崩して1年ほどで帰郷。自宅で休養する日々を送る中で出合ったのが「手話」だった。
 歌うことが好きで小学生時代には「手話ソング」にも挑戦していたことを覚えていた家族の勧めで、畠町新拠点で開かれていた能代手話サークル「はまなす」の手話教室に参加。基礎を学ぶ中で手話特有の「表現の幅の広さ」に魅力を感じ、「例えば『雨』という言葉を挙げると、動作を少し変えるだけで『小雨』や『大雨』と表せる。言葉にはない面白さがあった」と言う。好奇心が高じたところに会員から誘われ、平成25年に同サークルへ入会した。
 入会直後から毎週火曜日夜に上町の能代ふれあいプラザ・サンピノで開かれる例会にほぼ欠かさず参加。先輩から手ほどきを受けるとともに、聴覚障害を持ち、手話でコミュニケーションを取る人を相手にした実践的な練習にも挑戦している。また、万町の市在宅障害者支援施設・とらいあんぐるで開かれる「とらいあんぐる祭」に同サークルの一員として参加し、恒例の手話ソングを通して来場者が手話に触れる機会づくりに一役を買う。近年は自身が本格的に手話を学ぶきっかけとなった手話教室の講師を務め、手話の魅力を伝えている。
 「誰もが気軽に手話の魅力に触れ、学び始めることができるきっかけづくりを」という思いは、令和4年度に東北地区手連の理事に就任したことで一層高まったという。役員会で他の出席者と意見を交わした際に他県ではイベントや講座などを活発に開催していることを知り、「いつまでも『やらなければ』と言って、動かないのはいけない」と痛感。自身が会長を務める県手連の役員らと相談し、昨年6月に秋田市で住民向けの手話講座を初めて開催。来年度以降もさまざまな催しを企画したいと言い、「さらに門戸を広げていけたら」と語る。
 仕事や祖母の介護、サークル活動に加え、能代市民合唱団、お杉音頭を伝える会、日本舞踊の登寿穂会での練習・稽古など多忙の日々を送るが、「手話や芸術文化の活動は、自分が今を生きる上で必要なもので、この軸を崩したくない」と力を込める。

(藤田 侑樹)

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