
地域のチカラ 元気吹き込む ⑤
シイタケで夢広がる
レンチナス奥羽伊勢 伊勢 隼人さん(38) 八峰町峰浜石川

八峰町峰浜地域で特産の菌床シイタケを栽培するレンチナス奥羽伊勢の代表を務める。「八峰町のシイタケの魅力を積極的に発信して日本一の産地を目指し、地域活性化につなげたい」と夢を語る。日本を代表するホテルと取り引きしたり、生産規模を拡大したりと勢いは増すばかりだ。
秋田商高卒業後、秋田市の飲食店で1年間働いた後古里に戻り、家業を手伝った。初めて生産現場を経験し、「自分が育てたものが出荷されて食べてもらい、とてもうれしかった」と振り返る。シイタケ栽培の面白さに触れ、引き継ぐことを決めた。
令和2年に初代代表の父知さん(69)から経営を引き継いだ。かさの直径9㌢以上、肉の厚さ3・5㌢以上、かさの巻き込み1㌢以上、重さ90㌘以上を基準に掲げる肉厚なブランドシイタケ「黑椎茸」を開発。経営者として販路拡大にも奔走している。
昨年は日本のホテル「御三家」の一つ、帝国ホテル(東京都千代田区)の関係者の目に留まり、同ホテルのインターネットサイト「アナザーインペリアルホテル」への出品が決定。より上質な「ザ レンチナス 黒煌(こっこう)艶麗(えんれい)」を育て始めた。かさの直径11㌢以上、肉の厚さ3・8㌢以上、重さ110㌘以上とより厳しい規格としている。パッケージにもこだわり、菌糸を意識した高級感あふれる雰囲気が漂う。
同ホテルでは「特別なメニューとして提供されている」と言い、「まさか帝国ホテルと取り引きするなんて驚いたが、八峰町のシイタケを広く知ってもらう機会になっている。ブランド化を進めたい」と喜ぶ。
また、昨年から今年にかけてビニールハウスを9棟から12棟に増やすなど生産規模の拡大を進めた。年間生産量は120㌧から4倍強の500㌧に増加した。
社員の採用にも注力し、動画共有サイト「YouTube」で仕事の現場や従業員の様子などを発信して紹介している。従業員は13人から30人まで増え、「YouTubeを見て受けてくれた若い人もいる」と胸を張り、取り組みに手応えをつかんでいる。
従業員に「稼いだ分を賃金に反映させ、モチベーションを維持しながら楽しんで仕事をしてもらいたい」と言い、「それが地域の活性化につながるはず。今後は新卒採用も考えていきたい」と積極的な人材採用への思いを語る。
SDGs(持続可能な開発目標)も意識し、「かさの一部が少し欠けただけで売れなくなってしまうので、廃棄ロスに向けて加工用の商品を出したい」。
「仕事が楽しくて前しか見ていない」と笑顔を浮かべる伊勢さん。趣味を聞かれると「仕事と音楽」と答える。今年は「もっと成長するために、勝負を仕掛ける年にしたい」と力を込めた。
(山田 直弥)