伝統的メディアの価値

 ラーメンチェーン「山岡家」が能代市に出店するとの噂(うわさ)がSNSなどで広がっている。運営する丸千代山岡家(札幌市)は好調な業績を受けて株価が上昇し、店舗拡大していることからも期待が高まった。だが同時に都市部に多い24時間営業店がなぜ能代にと疑問も沸いた。

 山岡家は東日本を中心に約180店を展開し、本県には秋田市に2店舗ある。3日間煮込んだ豚骨をベースにしたスープが特徴で、濃厚な味が癖になる。自由にカスタマイズできるなど独特の文化があり、熱烈なファンも多い。

 先月から能代出店の話が聞かれるようになった。SNSでは国道7号沿いの具体的な名前が挙がり、工事が始まったとの投稿もあった。ラーメン激戦区に、ついに山岡家が進出か─。

 正月明けに現地を訪れたが、該当する空き店舗などは見当たらなかった。真偽を確かめるため、丸千代山岡家に直接問い合わせた。

 広報担当者は「能代に出店予定はありません」ときっぱり。能代出店情報が広がっていると伝えると「候補地を探していることが誤解を生んだのでは。担当者も驚いていました」と全否定された。山岡家は多くが郊外のロードサイド店なので、国道7号への出店にいくばくかの信憑性を感じたのだが、実際は違った。

 SNSの情報拡散は便利な一方で誤情報が広がるリスクを伴う。新聞は情報の正確性を保つため取材や裏付け調査に基づいて記事にし、間違いがあれば訂正を出す。事実確認に動き、単なる噂を打ち消すこともできる。SNSの時代にこそ、伝統的なメディアの価値が問われている。

(若)

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