「吹く風の先に」あるもの
令和3年1月にスタートした本紙の連載企画「吹く風の先に 能代山本と風力発電」は、今月5~8日に掲載した「第7部 地元にとって…」でシリーズを終える足掛け4年にわたる長期連載となった。
沿岸に多くの風車が立ち並び、かつ国の戦略に乗って開発が進められる洋上風力について、報道部経済担当の記者を専属に、その時々の情勢や地元の受け止め方などを取り上げてきた。記者の頑張りもあって、県外からも反響のある異例の連載となった。
連載の狙いとして記者と共有した問題意識が「風力発電というビッグプロジェクトの地元への経済効果を明らかにすること」。能代山本にとってどのような恩恵があり、また、地元側もどんな体制で臨んでいるかを報じていくことだった。
能代市の次世代エネルギービジョンは、関連する部品工場やメンテナンス事務所が立地し新しい雇用にも結びついて経済が活性化する将来像を描いたが、実際のところ、そうはなっていない。なぜか。第7部では、波及効果の乏しい現状の構造的な問題に迫った。
連載としては終了するが、来年以降も企画報道は継続していく。その際、担当記者と確認している一つが「エネルギーの地産地消」である。
現状では、県外の大手資本などが風力発電事業を展開して売電。収益の一部を地域貢献として還元する。しかし、全国に目線を広げると、地元で消費されるエネルギーを地元による再生可能エネルギー開発や地域新電力によって循環させるシステムを自治体の関与によって構築している例はいくらでもある。
能代市や県は初期の制度設計の段階で、なぜこのような発想にいたらなかったのか。そのような検証を含め報道したいと考えている。
(伊藤 仁)