地元芸能の終えん
能代市二ツ井町富根地区の愛宕神社祭典の7月24日、下部(しもぶ)通り音頭が最後の踊りを披露して回り、その歴史にピリオドを打った。幼い頃から慣れ親しんできた地元の芸能の終えんを目にし、地域の衰退を実感させられた。
愛宕神社祭典では、県民俗無形民俗文化財の羽立大神楽を先頭に、駒形獅子踊り、下部通り音頭、県文化財の富根報徳番楽が行列を成し、みこしとともに地区の各集落を一巡、その後、境内でそれぞれ演舞を披露していた。数年前に駒形獅子踊りが行列から抜け、下部通り音頭も踊り手の確保が難しく、今夏で姿を消すことになった。
通り音頭は、赤い衣装に菅笠(すげがさ)をかぶった女性たちが一列になり、「秋田音頭」のはやしに合わせ踊るもので、ここ50年ほどは高校生が中心を担っていた。かつて、母や姉も踊り、亡き父もはやし手として加わっていた。
本紙記事でも通り音頭が最後となることを取り上げ、「100年以上の歴史があると考えられている」としているが、確たる証言をできる長老もいなくなってしまった。
そんな中、9月29日に同市柳町の旧料亭金勇で開かれた市番楽大競演会を取材した。富根報徳番楽、種番楽、鰄渕番楽がそれぞれ、舞台狭しと勇壮かつ軽快な舞を披露した。舞手には中学生や高校生もおり、伝統をしっかり引き継ぐ若者の熱演は頼もしかった。
能代山本では途絶えてしまった民俗芸能も多い。能代市と市民俗芸能連合会は、動画投稿サイトのユーチューブ上の「民俗芸能アーカイブ」で数々の芸能の動画を公開している。動画では今はいないあの人、年老いたこの人の若い頃の姿が見られる。年末年始、帰省者と一緒に動画を見て、「あの頃」を思い起こすのもいい。
(池端 雅彦)