選挙の投開票日

 新聞記者は日々、締め切りに追われている。入社すると、「その日に取材したことは、その日のうちに原稿にしなければならない」と先輩たちに教えられた。スピードと同時に正確性、さらには出稿量も求められる。そこで大事なのが「段取り」。取材の準備や手順、出稿の順序を意識するよう言われた。

 締め切り時間は、読者に新聞を届ける時間から逆算し、印刷、逓送(ていそう)などを考慮して設定。この「待ったなし」の時間を強く意識する日がある。紙面制作が翌日未明まで続く選挙の投開票日だ。編集局が総力を挙げて臨む。

 報道部の記者は、情勢を読みながら幾通りかのパターンを想定して予定稿を用意。当選者の横顔を紹介する記事はどの候補者が勝ってもいいように準備する。整理部は、出稿が予定されている記事や写真、表はもちろん、思いがけない事態も考えながら紙面のレイアウトをシミュレーションして備える。

 開票時間までには手はずを整え、国政選挙であれば、テレビの速報を注視。関係する選挙区の候補者に当選確実が出ると、それを合図に紙面作りは加速する。

 作業を左右するのが、選挙管理委員会から発表される投票率や得票数といったデータ。各地の選管とも入念な準備をしているが、トラブルは起こる。開票が進まないと、こちらも滞り、「締め切りに間に合うのか」と冷や汗をかいた経験が何度もある。

 10月、3年ぶりに行われた衆院選は、首相就任から8日後の解散、26日後の投開票となり、いずれも戦後最短。慌ただしく対応に追われ、投開票日を迎えた。当日の緊張感は相変わらずだった。そして校了後に味わう解放感も。反省点はあったが、次に生かしたい。来年は知事選や参院選が行われる。

(工藤 剛起)

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