「地域のシンボル」に
後輩の薦めで話題のTBS系ドラマ「ライオンの隠れ家」を見た。虐待やDVなど社会問題に切り込んだヒューマンサスペンスで、劇中に登場する洋上風力発電のシーンが印象的だった。岸辺に並ぶ巨大な風車は壮大で、非日常感が漂っていた。架空の舞台だが、ロケ地となったこの洋上風力は、離岸距離などの特徴から前に取材した茨城県神栖市の「ウインド・パワーかすみ」だと気づいた。
ライオンの隠れ家は兄弟愛や人間関係の深層を描いた重厚な物語で、「特別な場所」で洋上風力が登場する。変化や自由、希望を象徴することがある風車が、登場人物の境遇や心の揺らぎを表現しており、ドラマに深みを与えている。
「かすみ」は平成22年に運転を始めた国内初の本格的な洋上風力で、観光スポットにもなっている。一方、令和4年に稼働した能代港の洋上風力も大規模な商業運転としては国内初だ。同港には各地から視察団が訪れており、映画やCMで撮影誘致できる余地は十分にあるのではないか。
風車をモチーフにした作品やCMは環境保護や将来の持続可能性の演出、平和や調和のイメージとしてよく利用される。先月開かれた能代おもしろ映画祭りで上映されたショートドラマ集「秋田県能代市に生まれて」でも洋上風力の場面が使われ、視覚的に能代の魅力を伝えていた。ロケ地として認知されれば能代を訪れる観光客が増える可能性がある。
能代山本沖では新たな洋上風力の建設が計画され、数年後には国内有数の風車群が出現する。しかし、巨大風車が並び立つことで景観が損なわれると感じる住民もいる。具体的なメリットを示すなどし、「地域のシンボル」へと認識を変える取り組みが求められる。
(若狭 基)