令和の米騒動
日々の昼食は、自家製おにぎり二つが定番メニューだ。地元産あきたこまちは、冷えてもおいしい。すぐにエネルギーに変わるのを実感でき、午後の踏ん張りを支えてくれる。
毎日の食に欠かせない米を巡り、今年の夏は異常事態が発生した。スーパーや米穀店の店頭から米商品が消えた「令和の米騒動」。
5年産米の不作で国内在庫が少なかった中、災害への備えで需要が急激に高まったことなどが背景にある。能代山本では、「米を送って」という声に応じた県外発送の増加という産地ゆえの事情も拍車を掛けた。
新米の流通で品不足は解消したが、余波は続いている。有利販売に向けて米を確保したい集荷業者間の競争が激化、肥料など生産コスト高騰を踏まえたJAの概算金(生産者への仮渡し金)引き上げもあり、店頭価格は高止まりしている。
能代市内のある米穀店では、こまちの価格が5㌔で3300~3800円台で、前年の同期より1千円ほど上昇。今のところ消費への影響はないというが、店主は「食べ盛りの子どもが多い家庭などは、家計負担が増しているはず」と話す。
物価が高騰する中で「お米まで」というのは消費者の率直かつ切実な思いだが、生産の現場には「これまでの価格が低過ぎた」という声も多い。あるJA関係者は店頭価格が5㌔3500円でも、茶わん一杯に換算すれば45円ほどとの試算を示し「大切な主食の価格として高いかどうか、考えてみてほしい。米作りのコスト増についても理解を広げていきたい」と話す。
懸命に米作りを続ける農家からは、今年の概算金大幅引き上げに「ようやく、いくらかほっとできる」という声を聞いた。昼に頬張るおにぎりを、ずしりと重く感じた。
(川尻 昭吾)