党利党略優先では…
この秋の衆院選。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題、いわゆる「政治とカネ」によって与野党は政治への信頼を取り戻すと強調し、反省と批判の声が交錯した。開票が進められた10月27日から28日にかけ、秋田2区の候補者の事務所を巡った。
街頭演説の延長戦のように候補者が国民の平穏な暮らしの実現に向けた政策を口にする場面もあったが、「党自身が変わらなければ、次の選挙も負ける」「(選挙戦で)党の値打ちを語ることができた。今後も党勢拡大に励む」などと所属する党の存在意義を主張する言葉に引っかかりを感じた。
多くの人が物価高騰などで家計のやりくりを強いられ、より慎ましい暮らしを迫られている中で、生活の上向きが期待できるような話よりも、政党の現状や今後に熱弁を振るう政治家に距離を置く自分がいた。
それから数日後、いつも勉強させてもらっている三種町下岩川地区のコメ農家を訪ねた。取材でもない私を温かく迎えてくれる70代の夫妻。収穫、出荷作業は一段落し、倉庫の一角で話した。
話題は、今年のコメの出来に始まり、近年の異常気象、概算金など農業に関わるものから、地元に保育園や小学校があった頃に子どもの安全を守ろうと通学路の拡幅を行政側に求めたことなど多岐にわたった。1時間余りの会話の中で、「俺が育てる米は美味い。自慢なんだ」という男性の話しぶりが印象的だった。
党利党略が優先されれば、人の心は離れていくばかりだ。国政に限らず、来年は知事選、再来年は能代山本でも首長選や議会議員選を控える。為政者に忘れてもらいたくないことがある。農業の現場に限らず、一日一日を大切に、懸命に、誇りや苦しみも背負って生きている人たちがいるということを。
(宮腰 友治)