分かりやすい日本語で

 「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方でいかせていただきます」。国内外で話題のドラマ「地面師たち」(ネットフリックス配信)の有名なせりふだが、能代市内のある団塊の世代は「横文字の意味が分からない」と首をかしげた。

 フィジカルは肉体的、プリミティブは原始的、フェティッシュは執着を意味する。実際にあった巨額詐欺事件をテーマにしたドラマで、豊川悦司さんが裏切り者に陰惨な制裁を加える際に発した印象的なせりふだ。テレビやネットでは芸人らが「最もフィジカルなやり方で─」と物真似するなどはやっている。なお地面師グループのピエール瀧さんの決めぜりふ「もうええでしょう」もネットでちょっとした流行語になっている。

 外来語に抵抗を感じる高齢者は多い。自民党総裁選でもコンセンサス、ガバナンス、アジェンダといったカタカナ用語が飛び交ったが、市内の80代医療従事者は「一般の視聴者は理解しているのか」と懐疑的だ。

 記事でも横文字が多いと、年配の読者から「分かりにくい」と指摘される。若者やメディアではよく使われる言葉でも、年配者には難しいという世代間ギャップが生じている。ネットなどで浸透していても高齢者にはなじみが薄く、誤解や混乱を招くことがある。

 有権者に政策を訴える政治家と同じく、記者も読者の立場になって分かりやすい言葉を選ぶことが、価値観の多様化が進む今の時代ではより求められている。豊悦風に言えば「最も分かりやすい日本語でいかせていただきます」になるか。

(若)

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