笑顔輝くシルバーさん⑪

琴の魅力多くの人に
筝曲 泊川 幸子さん(78)能代市若松町

泊川 幸子さん
泊川 幸子さん

 70年以上にわたり、琴を奏で続けている能代市若松町の泊川幸子さん(78)。日本を代表する筝曲家、宮城道雄さん(故人)から直接教えを受け、箏曲能代宮城会を興した母・千代乃さん(故人)の跡を継ぎ、子どもから高齢者まで多くの人に琴の魅力を伝え続けている。
 北海道芽室町生まれで、5歳の時に千代乃さんの再婚に伴って能代市に転居。母や門人が奏でる琴の音色に包まれる幼少期を過ごし、琴や三味線の手ほどきを受けたり、母に連れられて上京し演奏会や稽古に参加することもあった。神奈川歯科大(神奈川県横須賀市)進学後も毎月上京し、宮城宗家直門となっていた妹の良子さん(75)らの指導を受けて稽古に励んだが、「大学を卒業したら、このまま能代には帰って来ないのでは」と心配した千代乃さんらの説得で3年時に退学、帰郷した。
 その後は千代乃さんが主宰する「箏曲能代宮城会」、「おことと三絃の教室」に入り、県内外での稽古や演奏会にも帯同。門人と切磋琢磨(せっさたくま)しながら自らの技術を高め、「助教師」「教師」と高位の免状試験を一段ずつ突破。平成19年には最高位「大師範」に次ぐ「師範」免状を取得した。
 15年に千代乃さんが亡くなった後、箏曲能代宮城会の2代目代表に就任。「私が小さい頃、母は私を連れて宮城道雄先生の元で学び、能代に移住してから私や多くのお弟子さんに教えを伝えてきた。今度は私が宮城先生の教えを多くの人に伝えていかなければならない」との思いで、門人との稽古に向き合ってきた。
 また、若い世代に関心を持ってもらおうと小中学生向けの教室も企画。令和2~5年には文化庁の助成事業を活用した「伝統文化親子教室」を開講し、多くの子どもたちが琴を奏でる楽しさに触れた。「お琴に真剣に向き合ってくれる人ばかりで、私も時間が経つのを忘れるぐらい夢中になれた。今年は教室を開かなかったけれど、習いに来てくれる子もいてうれしい限り」とほほ笑む。
 11月23日には、能代市柳町の旧料亭金勇で開かれる「金勇オータムフェスティバル」に門人らと出演する。「多くの方のおかげでお琴を続けてこられた。当日もいい演奏ができるように稽古を頑張りたい」と意欲を見せた。

(藤田 侑樹)

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