笑顔輝くシルバーさん⑨
お客との交流楽しく
商い一筋 山口 敬子さん(85)八峰町八森
八峰町八森の「はちもり観光市」の一角で毎週末、消費者を笑顔で温かく迎える女性がいる。同町八森の山口敬子さん(85)は商い一筋の人生を送り、「人とおしゃべりするのが楽しい。商売が趣味のようなもの」とほほ笑む。
幼い頃から、山口商店を立ち上げた母トミヱさんの行商を手伝い、野菜などを大量に載せたリヤカーを押して歩いて母を支えながら弟の面倒も見た。この経験から、母の仕事を継ぐことは当たり前のことだった。
山口さんは会社員だった夫市郎さんを支えながら、車で行商に励んだ。「負けず嫌いだった母は八森で一番稼いだ女性だった。リヤカーで地域を回ったが、私は車を使った。車移動で楽をしている分、母に負けているが、それでも負けたくないと頑張った」。
母親譲りの負けん気の強さで、子ども2人を育てながら地域住民が採った山菜を買い取ったり、能代市内の市場で野菜や果物を仕入れたりして売った。睡眠時間が2時間の日も珍しくなく、「子どもに貧しい思いをさせたくない」と働き続けた。午前4時30分に家を出た山口さんの帰宅が午後9時を回ることもあった。一方で子どもに楽しい思い出をと、毎年恒例の北海道へのスキー旅行など家族旅行を欠かさなかった。
八森漁港荷さばき所で定期的に商売し、昭和63年の「八森町農村コミュニティ市場」完成と同時に同所で営業を開始。当時から営業する唯一の商店だ。鮮魚の取り扱いを始めた3代目の長男敬市さん(62)を支えて加工品の準備にも汗を流し、「体を動かすことが長生きの秘訣」と語る。
80歳から地域の老人クラブにも顔を出すようになり、仲間を車に乗せて運転して出掛け、ご飯を食べるのが楽しいという。商売仲間の女性たちと毎年、山形県鶴岡市の善宝寺に出掛ける旅行も楽しみの一つだ。
トレードマークは紫色の髪。初めは茶髪だったが、茶髪の人が増えてきたため「目立ちたい」と思っていたところ、子どもから紫色を勧められて40代で髪色を変えた。1カ月半に1度、4時間半かけてカット、カラーリング、パーマで整える。観光市では定位置に座って買い物客を迎え、「仕事も充実していたけれど、こうして毎週座ってお客さんと交流するのもとても楽しい」と語った。
(山田 直弥)