笑顔輝くシルバーさん③
癒やされストレス解消
大人の塗り絵 後藤 昭夫さん(84)能代市鳥小屋
能代市鳥小屋の後藤昭夫さん(84)は、認知症予防にも効果があるとされる「大人の塗り絵」に魅せられ、情熱を注いでいる。癒やし効果やストレス発散を実感しながら、傾聴ボランティアの活動や作品展示などを通して塗り絵の魅力を広めている。
後藤さんは、市内で学習塾を35年間営んできた。69歳で塾をやめたのを機に、市主催の傾聴ボランティア養成講座を受講。「心のキャッチボールの会」を立ち上げ、老化や孤独を感じた高齢者が気軽に集える場づくりに取り組んできた。
「自分自身が精神的にリラックスできる」とし、脳トレーニングや音楽・映画鑑賞をしたり、エンディングノートについて学んだりと多彩な活動を展開。参加者に喜んでもらえることにやりがいを感じてきた。
本格的に塗り絵を始めたのは6年ほど前。テレビ番組で見たのがきっかけだった。手先を動かすことで脳の活性化や集中力アップに効果があるとされ、会の活動に取り入れ、自身も塗り絵を楽しむようになった。
大人の塗り絵は、色鉛筆やマーカーペンなどを使い分けながら、下絵を多彩な色で塗り重ねる。最初は見本を見ながら初歩的な下絵から始めたが、どんどんのめり込み、今ではメインの絵の背景を描き加えたりとオリジナリティーを発揮。浮世絵や観音像、曼荼羅(まんだら)模様、アニメをモチーフにした超細密塗り絵など約130枚を完成させてきた。
後藤さんの作品は丁寧に仕上げた力作ぞろいで、超細密塗り絵は1枚完成させるのに1日5時間ほど机に向かい、1カ月ほど取り組む。「熱中し過ぎて、気が付いたら日が暮れ晩ご飯を食べるのを忘れていたこともある」と笑う。
運転免許の認知機能検査は、一発合格はもちろん、免許更新のたびに点数が上がり、塗り絵の効能を実感。作品は額に入れ、おとも苑や市役所、市民活動まつりの会場などで展示会を開き、その魅力を広めている。
高齢化に伴い、キャッチボールの会は活動を休止し、後藤さんは認知症ほっとサロン「オレンジの会」の活動に参加。現在は病気の治療のために一時的に塗り絵を休んでいるが、仏画の〝写仏巡礼〟に挑戦するため投薬に励み、今後も塗り絵を通した人とのつながりや生きがいを大事にしていく。
(成田 結子)