笑顔輝くシルバーさん②
書くことが好きだから
筆ペン習字 平川 保彦さん(89)能代市浅内
修了証書は平成29年1月27日付。能代市浅内字浜浅内の平川保彦さん(89)は「81の手習い」で日本ペン習字研究会の速習筆ぺん実用講座に挑戦、修了した。以来、筆ペン習字にはまり、現在は筆ペン部の3段だ。
市老人クラブ連合会の事務局長を12年度から27年度まで務めた。29年度から5年間は、市老連が主催する保坂福祉学園の「美文字筆ペン講座」初代講師で、これが筆ペン習字を始めるきっかけとなった。
筆ペンの講座をやろうかという話が持ち上がった際、「教える人がいない」という問題が浮上。「局長さんの字は格好いい」「局長さんから習いたい人がいる」「局長が(講師を)やればいい」「希望する人だけでも」。そんな褒め上手、勧め上手なスタッフに「かつがれちゃった」と笑う。「俺は、習ってるわけでもない。資格も何もないから、『違反』してる。どうすればいいだろう」と考えあぐねていた時、新聞広告で同講座を見つけ、受講。「それに、はまってしまった」と振り返る。
「字を書く」こととの出合いは、国鉄時代にさかのぼる。能代工高採鉱科を卒業し、昭和29年4月入社。早口駅と東能代駅に勤務、主に事務系の仕事をした。文書作成はガリ版と鉄筆。貨物列車の車票や、大型の掲示物は筆を使う。字を書くことをおっくうに思ったことはなく、字形は自然と身に付いたという。
講座修了後は同研究会発行の「ペンの光」を取り寄せ、月1回、課題を提出し、現在は筆ペン部3段。毎年開催される全日本ペン書道展覧会への出品も続け、令和4年には長年にわたる努力と研さんに対して理事長名の顕彰状も受けた。
「ひらがなは難しい、なかなか丸みが書けない」とは言うものの、「書くことが好きだから。字を正確に書くということが基本」と上達の秘訣を示唆。「娘には『ぼけるから、やめないで』って言われる」と明かし、仙台市に住む長女の激励が筆ペン習字継続の原動力になっているようだ。
平成12年6月に妻ツタさん(享年61)を亡くし、現在はひとり住まい。これからの目標は「健康を維持するだけかなあ」と控えめな言葉が口からこぼれたが、「大きい字を書きたいんだ、本当は。思い切り」。太い大きい筆を手に、「字」に挑む日が来るかもしれない。
(渡部 祐木子)