かつてのスポ担
記者になって最初に任せられた担当の一つがスポーツ。元高校球児の友人からは「試合が見られていいな」と言われたが、素直に喜べなかった。
高校野球の取材であれば、スコアをつけると同時に写真も撮らなければならない。試合後に書く記事を考え、決定的瞬間を逃すまいとしながらの観戦は気が気でなかった。時に、プレーに目も頭も付いていかず四苦八苦。「一塁にいたはずのランナーが、なぜ三塁にいるの?」といった具合に混乱した。
公式スコアが報道各社に提供されるのが当たり前ではなく、記事を書くのに自分の手書きのスコアが頼りだった。カメラもデジタルではないため、うまく撮れているかはフィルムを現像するまで分からず不安もあった。
余裕がなく、試合がスムーズに進み、早く終わることを願っていた。慣れない原稿を書くのに充てる時間がいくらでも欲しかった。だから延長戦ともなると、焦りが募った。
現在は延長戦に早く決着をつけるために、あらかじめランナーを置き、得点の入りやすい状況から始めるタイブレークが導入されている。新人の頃だったら大歓迎していた制度。しかし、両チームの闘志と執念がぶつかり合う過去の延長戦は、多くの名勝負を生んできた。野球の醍醐味(だいごみ)が薄れるという声も少し分かる。
そんなことを考え観戦、報道していた野球は、高校軟式の能代が全国ベスト4となって夏の大会に区切り。すでに春の甲子園を目指した戦いが始まっており、秋も各種大会が目白押しだ。熱戦を期待する。
(工)