「機会損失」解消を
能代市内の宿泊施設が不足しているため、せっかく県外客が同市を訪れても市外へ流れてしまう「機会損失」が生じている。全国から200人以上が参加した先月20日の液体水素利用シンポジウムでは、半数以上が秋田市や大館市に流れてしまった。大きな式典を計画しても大半が市外のホテルに宿泊したり、またとない大型イベントの誘致をふいにしたりし、商機を逃すケースが増えている。秋田市や大館市のホテルが能代からの〝棚ぼた需要〟で潤う現象も起きている。これでは、いくら能代市で集客に向けた各種施策を講じても効果は半減。打開に向けた取り組みが急務だ。
能代市内のホテルで予約が取れないため、車で1時間の秋田市や大館市に客が流れる状況が続いている。得られたはずの宿泊客の取りこぼしは、宿泊施設だけでなく、飲食店や土産などの収入にも影響する。客室不足は地域全体の経済活性化を阻害する要因ともなる。
水素シンポジウムでは200人超が集まったが、市内に宿泊できたのはわずか30人。100人以上の企業関係者が市外へ流れた。シンポジウムは今後も「水素のまち能代」で開かれる公算が大きいが、何とかならないものか。
出張で来能する人が多い秋田洋上風力発電の関係者からも「能代に泊まれなくて困る」との声をよく聞く。中国木材能代工場も年間3千人の見学者を見込むが、同じような状況だ。ホテル不足から能代への出張自体を取りやめる企業もある。4年に秋田市で開かれた国際イベント「世界洋上風力サミット」は当初、能代開催が検討されたが、ホテルが足りない上、大人数を収容できるコンベンション施設もないため、誘致を断念せざるを得なかったらしい。
宿泊客の流出はあまりにもったいない。幸い複数の業者が需要を見込み、市内の複数の箇所でビジネスホテルの建設を検討している。これとは別に、能代駅前交差点にある古いビルを解体して跡地にホテル業者を誘致する交渉が行われているほか、ホテルルートイン能代店が増築工事を進めている。度重なる機会損失を食い止めるためにも、早期に客室を増やし、コンベンションスペースを確保できないものか。
(若狭 基)