時空の旅人からの贈り物
先月上旬、本社に郵便物が届き、表書きの「ご依頼主」の記入欄には東京都内の住所と「梁瀬彦市」様、品名は「絵本」と書かれ、封を開けると色鮮やかな4冊の絵本と、短い文面の便箋が入っていた。
便箋には「能代で生まれた赤の魔女、トッピンの絵本です。読んでみてください。 時空の旅人より」と書いてあった。送り主の名前に見覚えはなく、後日、住所欄にあった携帯電話番号に連絡し、「時空の旅人」としばし話し込んだ。
梁瀬さんは能代市出身で76歳になり、都内で会社を経営していたが、59歳の時に大病で仕事を離れ、体調が落ち着いた70歳ごろから学童保育で近くの子どもたちに童謡を教えたり、読み聞かせをしたり、一緒に紙芝居を作ったりしているとのことだった。
そうした活動の一環で絵本を作ろうと思い立ち、一昨年から4冊を自費出版し、それらを郷里の新聞社に贈ってくれたことがわかった。
電話でのやりとりの中で、梁瀬さんは「子どものころは童謡を教えてもらったり、昔話を聞かせてくれたりし、楽しかった」と能代での幼少期を懐かしみ、それを今の子どもたちに自身で実践しているという。
絵本に描く風景は、能代で過ごした頃の思い出が原点にあるとし、北国の自然の豊かさや厳しさ、暮らしぶりを都会の子どもたちに伝えているようだ。
「能代の子どもたちにも絵本を読み聞かせられたらいいですね」と問いかけると、「最近は帰郷することも少なくなったけど、そういう機会があればいいね」と梁瀬さんは声を弾ませていた。
(池)