新型コロナの現在地~5類移行1年④

マスク理由さまざま

高校バスケ界の強豪が集う能代カップは1階コードサイドの観客席が復活。マスクなしの姿も目立った(写真は3日、能代市総合体育館で)
高校バスケ界の強豪が集う能代カップは1階コードサイドの観客席が復活。マスクなしの姿も目立った(写真は3日、能代市総合体育館で)

 新型コロナウイルス禍では「新しい生活様式」が喧伝され、さまざまな制約もあった。元年12月の感染者の初報告から4年余りが過ぎ、感染症法上の「5類」移行から8日で1年となった。社会に定着したもの、なくなったもの、自身が続けていること、考えたことは何か。コロナ禍を経験した能代山本の人々の声を聞いた。(取材班)

■着用が習慣化
 基本的感染対策として推奨されたマスク着用は5年3月(学校は4月)以降、屋内外とも個人の判断に委ねられた。「個人の自由になってから、会話しづらく面倒でほとんど着用していない。着けるのは病院の中だけ」(能代市二ツ井町の41歳農業男性)という人がいる一方、まだまだ着用派は多い。その理由はさまざまだ。
 仕事柄、着用し続け習慣化したという藤里町藤琴の60代自営業女性は「去年の猛暑でもマスクは続けた。警戒するに越したことはないでしょう」。家族に医療従事者がいることを理由に挙げる同市上町の自営業女性(61)は「油断はできない」と着用し、「慣れてしまい、顔を出す恥ずかしさもある」とも。
 同市末広町の会社員女性(45)は「イベント会場など人が密集する場所ではマスクを着ける」と感染リスクを考慮。ノーメイクでの外出に役立つ一方、息苦しさや肌荒れなど「煩わしさを感じる」のも本音だ。
 周囲の雰囲気から外せない場合もある。本当はマスクが嫌いという同市町後の主婦(74)は「周りが大方は着けている。『右ならえ』してます」と言う。
 職場にも変化が見られる。県境をまたぐ移動が〝解禁〟され、同市追分町の団体職員男性(43)は「感染拡大していた頃は仕事の県外研修が全くなかったが、5類に移行してから復活してきている」と話し、すでに2回、研修で上京。市内の30代保育士女性は、中止や規模縮小していた保育所の行事の多くがこの1年でコロナ前に戻ったとし、職場でのマスク着用は個人の判断だが、「もうかかりたくない」と基本的な対策として続ける。
 学校生活は新型コロナで大きな影響を受けた。同市坊ケ崎の高校3年の女子生徒(17)は中学時代、吹奏楽部の練習後は飛沫対策の床拭きが日課で、高校1年の文化祭は「お化け屋敷」も換気のため窓を開けた。現在は、校内のマスク着用と非着用が「半々くらい」で、「教室の前に消毒液はあるけど、あまり使わなくなったかな。教室の換気、3密対策も、そこまで神経質な感じはなくなった」。
 密集・密接・密閉は「3密」と呼ばれ、避ける対象とされた。同市西赤沼の主婦(41)は「食料品の買い物でも、週末のスーパーは混むのではないかと考える。家族で出掛ける先も混雑するような場所、日にちは選ばないようになった」と、今も回避。

■手指消毒も定着
 手指消毒が習慣化した人も少なくない。八峰町八森の団体職員女性(40)は帰宅後は手洗い、うがいとともに、消毒を欠かさず、自身と小学2年の子どもは予防接種を受けられないが、「消毒のおかげか、インフルエンザにかからなくなった」。能代市吹越の銀行員男性(22)も帰宅時の手指消毒を続けているという。
 外出先での手指消毒も定着。三種町浜田の会社員女性(36)は「スーパーや飲食店の出入り口で消毒することが当たり前。保育園児と小学生の子どもも、自分から消毒する」。同市清助町の団体職員女性(28)はマスクはやめたが外出先での消毒は続け、不特定多数が触る買い物カートや階段の手すりは「除菌しているのか、気になる。手すりをあまり握らなくなった」。

■宴会、交流復活
 感染リスクが高まるとされた対面で会話しながらの飲食だが、警戒心は薄らぎ、友人とのランチ、仲間との飲み会、職場の宴会と、交流が復活。八峰町峰浜石川の農業男性(37)は「仲間と近い距離で酒を酌み交わし、コロナ禍前のような雰囲気になった」と〝飲みニケーション〟を楽しみ、飛沫感染対策のパーテーションを置く店を「見なくなった」と懐かしむ。同市花園町の会社員男性(22)は飲み会参加を強制されることが減ったと感じている。
 「大皿で料理が出てきた時、抵抗感が生まれてしまった」とコロナ対策の小分けへの慣れに衝撃を受けた同市二ツ井町の自営業女性(53)。アレルギーがあるためワクチンは打てず、手指消毒液もむやみに使えず、「人との距離、行動制限には気を付けてきた。コロナもインフルエンザも一緒、そのまま要注意です」。
 声出し応援は解禁。野球好きの三種町鹿渡の無職男性(73)は「子どもたちの試合などを見る機会があるが、応援も含め声出しが制限された時期があった。元のようにグラウンドに声が響き渡るようになってきたのはうれしい」と喜ぶ。
 感染拡大防止を理由にイベントの中止や規模縮小が相次いだ。藤里町藤琴の40代会社員男性は、コロナ禍で中止した地域イベントが「そのまま、なくなった」と言う。「高齢化が著しい地域だと、いったん中止されれば復活するのは難しいだろう。これからの地域づくりに大きな影響があると思う」と顔を曇らせる。
 5類移行後、自粛していた家族旅行を再開した同市松美町の会社員男性(50)は「当たり前のように楽しんでいたことの価値や幸せについて考えるようになった」と話し、内省の機会になったよう。健康に対する意識も変わり、「コロナ対策で免疫力向上が何より大事と知り、運動習慣を変え、栄養バランスの取れた食事も取るようになった」とプラスの変化も生まれている。

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