新型コロナの現在地~5類移行1年③

 新型コロナウイルス感染拡大時の行動制限が緩和され、感染防止対策が浸透するにつれ、中止や規模縮小していた地域の団体が催す文化行事や手作りイベントが次々と復活。にぎわいや交流が戻ってきている一方、再開に至らないものもある。それぞれの事情、レジャー・観光分野の現状を聞いた。

(渡部 祐木子)

にぎわい、交流戻る

飛沫感染防止用の特注のついたて。旧料亭金勇は「5類」移行後も使用を継続
飛沫感染防止用の特注のついたて。旧料亭金勇は「5類」移行後も使用を継続

■やって良かった
 能代市御指南町の日吉神社長床で4月14日、「日吉花ノ下茶会」が5年ぶりに開かれ、愛好者約100人が一服を堪能。茶席を設けた畑澤社中の畑澤宗良さん(本名・良子、能代市松長布)は「お客さんから『ああ、良かった』との声を頂いた。やって良かった」と安堵(あんど)する。
 裏千家淡交会秋田北支部の能代地区が催す半世紀以上の歴史がある茶会だが、コロナ禍の2年から中止が続いた。月釜、研究会、総会も中止。「何にもない」と会員を辞める人が出始め、支部幹事長の畑澤さんは責任を感じていたという。
 会員減少、大きな社中の指導者が亡くなったり引退で「釜を掛ける(茶席を持つ)」ことが難しくなっていたところに、新興感染症が襲った。今春も「花ノ下」担当者探しは難航、「でも、今年こそはやらなきゃ」と畑澤さんが決心。神社の理解、社中の協力を得て、各服点(かくふくだて)の濃茶と薄茶を振る舞った。「少しでも会員増強につながれば」と期待を抱く。
 感染リスクを恐れ不特定多数の人を集める各種催しが中止を選択する中、形を変えながらも継続したイベントもある。その一つが能代公園のにぎわい復活を目指す「おもしろ祭り」だ。企画・運営を担った川添能夫さんは「情熱や連携があれば持続できた。今後にうまくつながっていくことを切望したい」と話す。
 緊急事態宣言下の2年春は中止したが、「必要以上に縮こまらず、野外に出て景色やアートを楽しもう」と、立体造形展の10月実施に踏み切る。3年は春のステージ発表と秋のアート展示を合体し「おもしろアート祭り」に。4年から春と秋をそれぞれ開き、感染症法上の「5類」移行後の昨年は春と秋を合わせて4千人を集客した。川添さんは「コロナで沈滞している。鼓舞していきたい思いがあった」と継続の判断を振り返り、「少しずつシフトし、若い人が前に出て行く場をつくっていきたい」と語る。今年は春と秋が「独立」し、新たなスタートを切る。

■糸口がつかめず
 一方、再開の糸口がつかめなかったイベントもある。東能代まちづくり協議会(浅野和一郎会長)の事業の一つ「東能代桜並木フェスティバル」は3年春が最後。今春の開催は話題にも上らなかったという。
 同フェスは能代市扇田の能代工業団地の桜並木を地域活性化に生かそうと平成22年から毎年開催。青年部が催しの主力を担い、観桜と芸能発表、遊び・飲食を楽しむ家族連れなどでにぎわった。
 コロナ禍の令和2年は中止、3年は規模縮小し11回目を開いたが、4年以降は不開催。浅野会長は「感染拡大を心配して2年空き3年空き、機運が上がらないうちに、機を逸した。今年は、考えていなかった」と苦笑いをのぞかせた。
 それでも代替イベントに花火打ち上げを実施。東部地区こどもまつりや長寿の集いは再開、今年2月には新規に「心のふれあいステージへようこそ」を地域住民対象に開催。地域活性化の歩みは止めない。
 「不要不急」の外出自粛などでダメージを受けた観光分野だが、回復基調にある。同市柳町の旧料亭金勇(杉山靖広施設長)は、ランチ利用の伸びに5類移行の〝効果〟が見られている。
 仙北市角館や男鹿市と青森県方面を結ぶ観光の中継点で、団体客の昼食会場に利用される。5年度のランチ利用は2752人で前年度比32%増。10月が452人と突出し、募集等を考慮すると5類移行を機にした伸びと推測。今年4月は300人を超え、団体客の戻りが数字に表れている。
 玄関に手指消毒液は配置するが、来館者の検温はなくした。飛沫(ひまつ)感染防止のついたては金勇の雰囲気に合わせた特注品で「安心して話してもらうため残してある」。杉山施設長は「団体も戻りつつあるが、1人旅や夫婦連れが自由に動いてきている」と話し、旅行社が新たなスポットを探す動きもあるという。金勇の良さを味わう利用を提供していきたい考えだ。

■「今年が勝負」と
 県外客が消え、宴会需要もなくなる中で、宿泊は国・県・市町村の助成という強い支援があった。八峰町八森のハタハタ館はコロナ禍渦中の3年度に稼働率100%の月もあったが、現在は補助終了の反動が見られるとする。
 洋室ツインから20畳間の和室まで8部屋(最大35人)ある。宿泊助成併用で1泊2食付き1万3千円のプランが3千円になった。元年度56・0%だった稼働率は支援開始の2年度71・2%、3年度85・0%、4年度84・0%に急伸。年度途中で助成終了した5年度は6割程度の見込みで、助成の効果と反動は明白だ。
 「コロナ禍は分厚い助成があり、助かった。けれど、その矢先の雨」とハタハタの里観光事業の須藤徳雄常務取締役。一昨年、昨年の大雨で白神観光が痛手を受けた影響は大きく、今年度も客足の戻りは「いまひとつ」。空いた部屋はビジネス客とみられる個人客で埋まるが、売り上げは伸びず、〝得意客〟の夫婦連れやファミリー層とのすみ分けを図るべく町は改修を予定。自然災害がないことを祈りつつ、「今年が勝負」(須藤常務)と巻き返しを狙う。

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