新型コロナの現在地~5類移行1年①

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザと同じ5類へ変更されてから、8日で1年が経過する。感染症が健康に対する脅威となることを知らしめ、目に見えない未知のウイルスへの恐怖が社会、経済、生活に大きな影響を及ぼした「コロナ禍」からひとまず脱し、平常になりつつある。一方、ウイルスは消えてなくなったわけではない。新型コロナ感染症の現在地を見る。

(渡部 祐木子)

緊張感今も変わらず

防護服の着脱を研修。高齢者の生活の場を守る対策は続く(昨年6月、特別養護老人ホームよねしろで)
防護服の着脱を研修。高齢者の生活の場を守る対策は続く(昨年6月、特別養護老人ホームよねしろで)

 現状を「『普通の風邪』になる途中段階にあることは間違いないと思うが、しばらくは『流行の波』があるだろう」と能代保健所の永井伸彦所長は推し量る。新型コロナウイルスは任意に変異し続けるが、これまでのところ強毒化することはなかった。「順調に、人類に定着しつつあるのだろう、と思う。大きな変異がないことを祈っています」。
 昨年12月ごろからの流行「第10波」の主流「JN1系統」は変異株「オミクロン株」の一種で、感染力は「若干高め」という。本県は第10波が長引き、高齢者施設や医療機関などでの集団発生も後を絶たない。社会全体の感染対策が緩和され、患者や従事者の持ち込みはやむを得ないとし、施設内で感染を広げない対策は必要と指摘する。
 社会生活では、感染者がいることを前提とし、症状がありそうな人と会話する時はマスクをするなど要所を抑えた生活を勧め、「少しはコロナを意識しながら、普通の生活を営んでください。気を付け方を学び、感染の防ぎ方がうまくなっていけばいい」と助言する。
 コロナ禍を回顧し、対策上の問題点に医療ひっ迫を挙げる。外来も入院も、一部の専門的な医療機関任せでは立ち行かなくなることを学んだとし、「どんな医療機関でも診ていく必要がある。みんなで受け入れるという共通の意識ができていれば、もう少し医療ひっ迫は避けられる」。未知の感染症は今後も起こり得る。経験がより良い対策につながることを期待する。

■最良の機能探る
 医療機関は、病気と闘う患者を守ることと同時に、襲来した新興感染症への対応が求められる。その年月は5年目に入り、能代厚生医療センター(能代市落合)の太田原康成院長は「分からないことが分かってきた分だけ、見えない不安は軽減してきたと思いますが、無くなったわけでは決してない。日々、発熱患者が来て、陽性者がたくさん含まれている。緊張感は今も変わらない」と語る。
 4年秋に始まる「第8波」では院内クラスター(感染者集団)が発生。10月中旬から患者や職員が次々と陽性になり、11月7日の診療再開までの約2週間は救急外来も止めた。ジェイコー秋田病院、能代山本医師会病院の協力で乗り越えたが、「われわれ規模の病院がストップすると大きい影響があるんだと実感した」と担う使命をかみしめる。
 市中感染は広がる。院内をゾーニングし陽性患者は隔離する。患者を守るためにと続く面会制限、家族のやり場のない気持ち。従事者自身も感染の不安や、葛藤を抱えながら、病院としての「機能の一番いいところ」を探る日々は続く。

■生活の場を守る
 抵抗力が弱い高齢者が生活する場で、密着が不可避の介護施設。「新型コロナには翻弄(ほんろう)された」と特別養護老人ホームよねしろ(同市二ツ井町)の工藤美佳子施設長は話す。
 平時から地元診療所とのつながりは強く、感染症対策マニュアルや研修は実践。基本的感染対策は講じていたものの4年12月22日~5年1月11日にクラスターが発生。県コロナ医療支援チームの指導も受けたが、感染は爆発的に広がり、利用者約60人中45人、職員は約半数が罹患(りかん)した。
 日常は変わった。病院受診後は対面の食事を避け、3日間は丁寧に健康観察。基本的な感染対策や体調管理は継続。手すりの消毒は秋冬の対策から通年・通常へ。5類移行後も感染は散発したが、経験を糧に対策を講じ、生活の場を守る。行事や自宅への一時帰宅も実施し、予約制の面会はほぼ毎日2、3件。「利用者の生きる力を見ていくのが、私たちの仕事」と話し、緊張感を維持し最大限の注意を払いつつ、利用者の活力や笑顔を引き出す。

■尻込みせずに
 密接・密集・密閉の「3密」回避が求められた学校だが、子どもたちが戯れる光景が戻っている。同市第四小の佐藤充校長は「子どもたちは、多くは『くっつきたい生き物』。その集団に感染者が多いとなれば、その瞬間スイッチが入ると思うが、何もなければ3密は意識しない」。
 4年4月と11月に休校を判断した。能代山本で児童数は最多で密度は高い。感染拡大は速く、危険を早めに察知し回避する必要性と難しさを知った。現在、使用は任意だが検温機器と手指消毒薬は昇降口近くに配置したまま。給食は一方向を向いて食べる。運動会は大人数が集まる時間を短縮する狙いで半日にし、定着。感染状況は保護者へメール連絡している。
 地域の感染者が増えるとマスク着用も増え、「自分を守る意識が身に付いたのでは」。「慎重にはやるけれども、あまり尻込みせず、やれることはやっていった方がいい。人と会えて何かするというのが学校。それは大事にしたい」と語った。

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