「美しい国」の現状

「21世紀の先進国の日本で、熱冷ましがないとか…。こんなものも手に入らない21世紀の日本なんでしょうか、と思う」と、能代市内の調剤薬局で働く薬剤師さんが、ため息交じりに話した。
久しぶりに聞く「21世紀」という単語に軽くときめきを覚えつつ、享受する「当たり前」は存外にもろく、実は幻想かも知れない、との感を抱いた。

後発医薬品を中心とする医療用医薬品の供給不安について、10月に能代山本の状況を取材した。
「今さら?」と思う読者もいただろう。
何せ、3年近く続いている現象だ。

1製薬企業の法令違反発覚というドミノが一つ倒れたら、あれよあれよと十数社で不祥事が露見。
日本製薬団体連合会が毎月公表する調査結果の5~11月分を見ると、9千品目前後の後発品のうち、全ての受注に応じられる「通常出荷」は3分の2程度にとどまる。
供給不安が長引く原因は、少量多品目生産、共同開発・委託製造、薬価下落、赤字品目の増加、原薬や原材料の海外依存──などが挙げられているが、いずれも発生ほやほやの不具合ではない。

平成19年、「『美しい国』へのシナリオ」の副題付きの「経済財政改革の基本方針」で「24年度までに数量シェア30%(現状から倍増)以上」と後発品の目標を掲げて以降、国は、ぐいぐいと使用促進してきた。
積み重なった無理が疲弊や弊害を生んだとも言え、一朝一夕では解決しそうにない。

お年頃もお年頃なもので、毎日服薬する。
きょうも「薬をのむ」ことができるのは「当たり前」なのではなく、たまたま通常出荷の薬だったり、最前線の薬剤師たちが苦労して工面してくれるおかげなのだ。
かくも、21世紀も「美しい国」も、ひずみと破綻をはらみ、綱渡りで、薄氷の上に成り立つ。

それで、いいのか。

(渡部 祐木子)

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