「能代モデル」模索を
昨年12月に能代市の能代港で運転開始した国内初の大型洋上風力発電に各地から視察が相次いでいる。
二酸化炭素の排出抑制が業種を問わず求められる中、有効策の一つである洋上風力への関心が高まっているためだ。
しかしここで作られた電気が地元に還元されていないことは、思いのほか知られていないようだ。
再生可能エネルギーの切り札として期待される洋上風力だが、足元では関心が低い。
電力が地産地消されず、恩恵が建設業などごく一部にとどまるためと考えられる。
同市では海底を改変して洋上風車が建設され、保安林を伐採して陸上風車が立ち並ぶが、作られた電気は大都市などに流れ、収益は大手中心の事業者が得る。
市はエネルギーのまちを掲げるが、再エネを使った融雪道ができるわけでも、住民の電気料金が安くなるわけでもなく、地元を潤す構図にはなっていない。
新たな展開もある。
県は能代西高跡地で再エネで賄う新工業団地の整備を構想している。
過去に能代工業団地に風車を建てて立地企業の電気料金を安くする試みを計画したが、法的な絡みもあって頓挫しており、これを教訓としてほしい。
八峰町・能代市沖の洋上風力では、発電した電気の買取りを国が保証する今までのFIT制度に代わり、事業者が売電先を確保するFIP制度が導入される。
売電先はクリーンな電気で企業PRしたい大手が想定され、ますます電気が大都市に流れ、大企業の成長を後押しすることになる。
人口減少で電力需要が細る傍らで再エネが急拡大し、能代火力発電所のような石炭火力は出番が減っていく。
再エネ普及の陰で深刻化する地方と都市圏の格差問題。
市で洋上風力の電気を買って活用するなど、地元にも有益な「能代モデル」を模索すべきだ。
(若狭 基)