爆発の瞬間捉える
今年も残りわずか。
1年を振り返ると、さまざまな取材に携わったが、とりわけ印象に残っているのは能代市浅内のJAXA(宇宙航空研究開発機構)能代ロケット実験場の爆発事故だった。
7月14日、同実験場でイプシロンSロケットの第2段モータの燃焼試験が行われた。
同年6月6日に実施した第3段モータの試験はトラブルなく終えていたため、今回も予定通りに終わるだろうと安心し切っていた。
天候にも恵まれ、順調に作業は進んで午前9時ごろに点火。
真空燃焼試験棟からはごう音とともに炎と白煙が吹き出し、「予定通り進行して良かった」とほっとしたのもつかの間、燃焼開始から1分弱で爆発音が響くとともに、試験棟の屋根などが吹き飛んで燃え上がり、モータの破片のようなものも飛び散った。
幸い、けが人はなかった。
事故の後、テレビ局などが続々と集まり、ヘリコプターから撮影を行う様子も見られた。
衝撃的な光景に頭の中は真っ白だったが、カメラのシャッターは切り続けた。
振り返れば、同実験場での燃焼試験に毎回足を運んでいたこと、取材対象から目を離さなかったことが決定的瞬間の撮影につながった。
その後の調査で、点火装置の一部が溶融・飛散し、モータケース内面の断熱材を損傷してしまったことが爆発の原因だと特定された。
イプシロンSのモータ燃焼試験は第2段が終われば全て完了する予定だっただけに残念だったが、ここで終わったわけではない。
JAXAは来年度下半期の打ち上げを目指しており、得られたデータを基にロケットが完成し、宇宙へ飛び立つ日が来るのが楽しみだ。
時間がかかるとは思うが、試験棟も再建され、「宇宙のまち」を代表する施設として活躍することを願う。
(小林 佑斗)