複雑なエネルギー情勢

東北電力は一般家庭向けの「規制料金」と、オール電化の家庭や企業などが契約する「自由料金」を来年4月から値上げする。
国の認可が必要な規制料金については、平均33%の値上げを経済産業省に申請済み。
自由料金は燃料費調整制度の価格上限を12月分から撤廃しており、電気の使用量が増える冬期とも重なり家計に重くのしかかる。

値上げの理由は、ロシアのウクライナ侵攻や円安などで燃料費上昇分を料金に反映させる燃料費調整額が上限に達し、東北電の経営を圧迫したため。
是非に揺れる原発の再稼働を織り込んで上昇幅を抑えたという。

3割強の値上げは、物価高に苦しむ一般家庭にとって簡単に許容できるものではない。
コロナ禍で疲弊した地域経済への影響も計り知れない。
すでにこれまでの値上げ分だけで事業所は悲鳴を上げている。
政府は電気料金の負担軽減策として月約2千円を支援するというが、焼け石に水である。
能代市内の店には隙間用テープや湯たんぽなどの節電グッズが並ぶが、いくら節約しても努力ではどうにもならない切迫した状況が予想される。
対照的に莫大な燃料費で潤う中東産油国の富裕ぶりを見ると何ともやり切れない気持ちになる。

原発事故後、国内の電力供給は火力発電に依存してきたが、脱炭素化や電力自由化の流れで火力発電の廃止が相次ぎ、供給力が低下。
政府の方針転換により原発を動かし火力の燃料が減れば、中東などから買う高額燃料への依存度が下がり、国民負担は軽減される。
だがそうなると経済効果の大きい能代火力を含む石炭火力の退出論が再燃するだろう。
能代山本沖で事業が進む洋上風力は生産拠点が海外にあり、地域波及効果は未知数だ。
エネルギーをめぐる情勢は複雑で、矛盾をはらんでいる。

(若狭 基)

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