地域の線引きなく

新米の季節は、小腹が空いた夜中に悪魔の誘惑に駆られる。
炊飯器に残ったほかほかご飯で作る塩むすび。
こんな時間に…と思いながらも、かぶりついたら止まらない。
この秋、県産米新品種「サキホコレ」が本格市場デビューした。
プチ贅沢としてわが家も購入。
炊いた日の夜は、もれなく悪魔のささやきに屈した。

「コシヒカリを超える極良食味米」をコンセプトに掲げる。
今年の出荷分は店頭価格が県内外とも2㌔で1,200円ほど。
ブランド米のつや姫(山形)、新之助(新潟)と同程度といい、品種開発した県は「順調なスタートを切った」と受け止める。
来年は作付面積を2倍近い1,349㌶に拡大し、集荷量も倍増の7,700㌧を目指す。

「秋田米のブランド力向上のけん引役」との位置付けで、PRも華々しかった。
明るい話題だったことは確かだが、複雑な思いも拭えなかった。
現時点で、能代山本では作付けができないからだ。
県が設定する「作付け推奨地域」は県央と県南の15市町村で、県北はすべて対象外。
晩生種の品種特性から、品質を確保するために一定の気象条件が必要と説明する。

推奨地域への繰り入れ可否は、昨年からJA主体で取り組んでいる栽培試験の結果次第。
能代山本でも複数の圃場で来年まで行われる。
県が収量や食味など3年間のデータを検討して適否を判断するが、良好な結果が得られても、作付け可能となるのは6年産以降だ。

「ブームに乗り遅れてしまった感が否めない」。
今年10月、農家と農政担当者が集った会議で、北秋田市の男性農家がこぼした。
能代山本の農家も同じ歯がゆさを感じているはずだ。
サキホコレの投入で秋田米ブランドの再構築を目指すなら、地域の線引きを解消する方策も必要ではないか。

(川尻 昭吾)

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